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「それはね、昔から伝わる話なんだけど……」 おばあちゃんは遠い目をして、まるで過去の出来事を目の前で見るように語り始めた。 「ある神様がいたんだよ。その神様は、ただ外の世界を見たいだけで現れてくるんだけど、どういうわけか、姿を現すとその地域に大雨を降らせてしまうんだ。神様は悪気なんてまったくなく、ただ世界を見たい、楽しみたいって思ってただけなんだけど……」 おばあちゃんの声は静かだけど、その言葉には重みがあった。私と弟はじっと耳を傾けた。 「人間たちはそのある神様が雨を降らせるのを恐れてね、昔は生贄を捧げていたんだよ。ほら、人間って、何か災いが起こると、それが神様の怒りだって考えるだろ?だから、神様が怒りを鎮めてくれるようにって、生贄を捧げれば、雨が止むって信じてたんだよ」 生贄と聞いて、私の顔は歪む。そういう類の話は苦手なのだ。ふと弟の方を見ると、弟には理解が難しいようであった。 「でもね、そのある神様は、別に生贄なんて欲しくなかった。ただ捧げられたものだから、一応食べてたみたいだけど……。それでも、他の神様たちが、生贄に夢中になっているその神様を封印してしまうんだよ。」 おばあちゃんは少し黙り、私たちの顔を一瞥した。まるで、この話をどう受け止めるかを確かめているかのようだった。 「でもね……」 おばあちゃんは少し声を潜めた。 「その封印も永久に続くわけじゃなくて、ある神様は封印の綻びを見つけては、また現世に現れるんだよ。外の世界が見たくてね……ほんとに、それだけのことなんだ」 おばあちゃんは続ける。 「でもまた現世に現れたら大雨を降らせてしまう。生贄が用意されて、夢中になって、同じように何度も封印されて、また封印が綻んだ時に現れて、また雨を降らせて……その繰り返しだったんだ」 私は、おばあちゃんの言葉の奥にある何か大きな真実に触れたような気がして、言葉を失っていた。ただ、目の前にあるてるてる坊主が少し違う意味を帯びて見えてきた。
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