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近すぎる距離に、腕が出そうになってしまう。
「で? もう流風の事はいいわけ? 流風の趣味、教えてやろっか?」
趣味……。
どうやらミオくんから、聞いたらしい。
「私の、」
「うん?」
「私の……、流風と仲良くなりたいって意見は、変わらないよ」
そういった瞬間、あからさまに不機嫌になった真耶は、「おめめは頭悪いなァ」と、後頭部に回っていた手に力を入れた。
その力は髪を掴んできて、その髪を引っ張る痛みに「っ、いた…っ」と顔を歪めた。
「ほんっと、頭悪い女ってキライ。流風の事キライって知ってんのにな?」
「っ……」
「どうする? 人質がある今、お前どうするべきだと思う? 頭悪くても分かるだろ?」
「……」
「ほら、お前の口から言えよ。俺の女にしてくださいって」
「なんで……っ、好きでも、なんでもないのに……」
「おめめの友達どうなってもいいの?」
「っ……」
ほんとに、こいつは──……。
髪を掴まれる痛さで涙を浮かべていると、真耶が子供じみたように笑った。
「……あーあ、泣いてる。可哀想に」
ちっとも、可哀想なんて、思ってない。
「まや……」
「うん?」
「友達だけは、やめて……」
小さな声で呟けば、真耶は「じゃあ成立ってことで」と、髪からの力を抜いた。
無くなった痛みに安心していると、耳元に唇を寄せた真耶は、「放課後な」と、呟いてきた。
放課後……。
「今度こそ来いよ。瞳ちゃん」
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