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秋のリンゴの収穫です。夏の過酷な暑さを乗り越えた、赤い赤い実が陽光を返して光っています。
おじさんが、きれいなリンゴをひともぎふたもぎ。
おばさんが、あまいリンゴをひともぎふたもぎ。
伸ばした手が、ちょっとの間ためらって、すぐまた動き出します。
ポイと放られた赤い実が、コロリと地面に転がりました。
双子の娘が、転がった赤い実に駆け寄って、しゃがみこみます。
膝をさすってじっと見ています。
黄色いリボンのほうの女の子が、指をつんつんと伸ばしました。ゴロリと赤い実が転がると、その反対側は虫食いでした。
赤いリボンのほうの女の子が、実を拾ってエプロンでこすります。ピカピカになった実を、両手で抱えてニコニコしています。
おじさんが双子にいいました。
「くずリンゴで遊ぶのかい? かまいやしないよ」
おばさんが双子にいいました。
「捨てるばかりのリンゴさね。好きにおし」
双子は地面に転がったリンゴを走って追いかけます。
黄色いリボンのこが一個拾うと、赤いリボンの子が二個拾います。
黄色いリボンの子が、ポロリと一個実をこぼすと、赤いリボンの子がポロポロと二個こぼします。
腰かけていたおばあさんがやってきて、双子のエプロンを結びます。
袋になったエプロンに、双子はリンゴをどっさりと集めました。
おばあさんと双子は、手をつないで家に帰ります。
黄色いリボンの子が、実を洗います。
赤いリボンの子が、皮をするするとむきます。
黄色いリボンの子が、虫食いをナイフで切り落とします。
赤いリボンの子が、実を小さく切ります。
ふたりそろってジューサーに入れて、スイッチオン。
おばあさんのおなべにも、切った実をいれてコトコト煮ます。
おじさんとおばさんが帰るころ、お家は甘酸っぱい香りでいっぱいです。
テーブルの上のステーキにはリンゴのソースがたっぷりかかって、グラスはフレッシュなリンゴジュースで満たされたいます。
「デザートにはアップルパイだよ」
おばあさんがにこにこといいました。
双子が、お互いのエプロンを解きます。
ふたりならんで、スカートのはしを摘まんで、ちょこんとおじぎをします。
「めしあがれ」
「めしあがれ」
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