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「まあ、そのうちな。平君が大仕事を持ち込んでくれたお陰で本当に忙しくなった。持田君、とりあえずデパートから回ろう。オペレーション・ボッチとなれば、私が出向かねばな。さあ、平君も出たまえ。社長室は閉める」
宮辺はそう言って平を社長室から追い出し、自身も持田を伴って出かけて行った。
宮辺はイノベーショナルな経営者であると自負している。会社の歴史を尊重しながらも、社会の変化には柔軟に対応している。自らハンドルを握り、細かい碁盤の目を縫って走っているこの車だけは別だが。
従業員の間でも、この車自体の評判はいい。ただ、生花店に似合いそうなモスグリーンとオレンジのツートンカラーに塗装されたその車を、ハンプティダンプティのような体型をした還暦男が操るのはミスマッチだ。
六五年式スバルサンバーライトバンデラックス。先代社長から、成人のお祝いに中古で譲り受けたというが、車を複数台所持しているならまだしも、このサンバー一台だけを乗り続けているのは、平曰くある種の変態にしかできない。
「社長、ところでオペレーション・ボッチというのは?」
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