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助手席の固いシートに座る持田は、最初のデパートを出て次のデパートに向かう途中で宮辺に訊いた。たった今訪ねた担当者に、宮辺は「弊社の業務がほぼ一日停止するので、急な発注には応えられない」と光る頭を下げていた。
「持田君、今の回想に『光る』っていうのは必要だったかね?」
「あら、声に出ていました? 失礼しました。でも、実際何をなさるんですか? 全社的な事だとは想像できますけど」
「まあ、あんな大層な呼称を平君は付けたが、別にたいしたことじゃない。ターゲット以外の全員で年休を取るんだよ。適当な理由を付けてね」
それを聞いた持田は、眉間に皺を寄せて頭を抱えた。
「あの、もしかしてそれ、私が入ったばかりの頃もありました?」
持田は、随分前に上司から「適当な理由を書いて年休を取ってくれ」と言われたことがある。当時はまだ周囲に親しく話す者もおらず、年次有給休暇を一日も消化していない自分だけに出された命令だと思っていた。
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