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「まあな。しかしそれでは丸はやれん。面白そうだと思った理由がないから三角だ。だが、酒の席での思い付きで決めたことだし、私自身ここまで面白くなるとは想像していなかった」
持田は再び下がりゆく顎を閉じた。
「酒の席かあ。なんだかとてつもなく下らない匂いしかしませんね」
呆れつつそう言いながらも、持田は正解が激しく気になり始めた。
「社長、ヒント下さい。ヒント」
「ん? そうだな、平君の下の名前は知っとるか?」
「いいえ」
持田と平は同期だが、特別親しいわけではない。名前など聞いたこともなかった。
「名前を知らないんじゃ答えは出ないな。信号で停まった時に教えてやろう」
宮辺はその予告通り、停車した時に駐車場のレシートの裏へ「平沙院」とフルネームを書いて、その名前の由来を話しながら持田に渡した。
「それで『しゃいん』と読む。珍しい名前だろう? ご両親が新婚旅行で訪れた中国の片田舎の地名らしい。お二人にとって何か印象的なことがあった場所なのだろな」
その紙を見て、持田は一秒と要することなく理由が見えた。
「平社員なのに課長、ですか? それってもう役職ハラスメントですよ」
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