第3話 もふもふスープで決起集会

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第3話 もふもふスープで決起集会

 会社に戻った平は数分で昼食を済ませ、オペレーション・ボッチの周知に社内を駆け回った。ターゲットとなる安部が休んでいるこの日のうちに告知するのが最も効率がいい。社内の半数近くはオペレーション・ボッチ未経験者だ。平は特に重要な点を、何度も各部署の長に対して念を押した。 「いいですか、大事なのは二つ。当日まで安部君には絶対に知られないこと。これは当然ですね。もうひとつ大事なのは、年次有給休暇届の理由欄は適当に書くこと。適切な理由を書くのではありません。適当に理由を考えて書いて下さい。社長に最優秀適当賞を用意してもらいますので」  説明をしながら、平は胸に情熱の火を燃え上らせていた。久しぶりに感じる高揚感だ。営業成績だけは平均以上の従業員が、真に会社の戦闘員になれるかどうかが自分の口先にかかっている。だが、平一人がどれだけ奮闘しても成功はない。会社全体がひとつになることが最も重要だと、平は常に新人へ教えてきた。  会社の経営は綱引きと同じだ。どれだけ力のある人材を集めても、息を合わせ同じ方向に力を出さねば意味がない。幸い宮辺物産は、ことイベントでの一体感に関しては目を見張るものがある。
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