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「『かちょー。自分、今日怠いッス。仕事できそうもないッス』とか言われたかな?」
五十歳手前の曽我が、自分の息子と同じ年だという安部の口調と声色を真似して言った。それを聞いていた女子社員は声を出して笑っていたが、真鍋は頭を抱えている。
「いや、もう、その通りなんですけど、笑えないですよ」
真鍋の嘆きに、曽我も表情を引き締めた。
「確かにね。月に少なくとも一回はありますからね、彼。真鍋課長、安部君の年休は残り何日ですか?」
真鍋はデスクに置いてある部下の業務日報の中から、安部のものを抜き出して確認した。
「えっと、安部は二年目だから、あと五日ですね」
それを聞いた曽我は、真鍋のデスクにあった卓上カレンダーを手に取った。
「まだ九月だというのに。三月まで持ちますかね?」
「さあ、私に訊かれても。あいつ、変に営業成績は良いし、口が達者というか、生意気というか。迂闊に叱ると、こっちが疲れて参っちゃいますから」
曽我は再びコーヒーを一口飲み、口を開いた。
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