7人が本棚に入れています
本棚に追加
「今回のターゲット。当日仕事をする一人というのは、今日休んでいる安部君です」
平が安部の名前を出すと、少しお白州がざわついた。それが収まりかけた頃、町田が手を挙げた。
「あの、平課長、よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます。つまりは、安部君には内緒で他の社員は全員休むって事ですよね?」
「そうです」
「そんなことしたら、安部君も帰っちゃいそうなんですけど。それか、最悪会社も辞めちゃいそうで」
町田の意見に、他の従業員も頷いている。
「そうならないように私が居ます」
自信満々に言う平だったが、安部を知る同僚たちの不安は簡単に拭えそうになかった。
「大丈夫ですよ、平課長に任せていれば」
全員がドアの方から聴こえたその声の主に注目した。
「やるんでしょ? オペレーション・ボッチを。駐車料金精算しに総務に寄ってきたんですけどね。その話で持ちきりでしたよ。どうも、只今帰りました」
そう言ったのは真鍋だった。集まっていた者たちが口々に「お帰りなさいませ」と返した。平も真鍋に向けて笑顔を見せながら続いた。
「お帰りなさいませ、おなべ」
最初のコメントを投稿しよう!