6人が本棚に入れています
本棚に追加
「とうとう気付いちゃいましたか」
真鍋の予想外の反応に、平は思わずテーブルを叩いた。
「なに? 鍋蔵知ってたの?」
「知ってたというか、社長、ってか、この会社のやりそうなことだなって。平課長の名前を見た瞬間に思いましたよ。なんか、子供の頃から『平社員』って呼ばれてたんだろうなって。逆に今まで平課長が気付かなかったのが不思議ですよ」
「だって、子供の頃は『尼さん』ってあだ名だったもん」
そう言った平は、今度はゼンマイが切れたおもちゃのように額をテーブルにコツリとぶつけて停止した。
「こんな会社、一生祝ってやる」
「祝うんですか?」
「呪うと間違えたのよ」
「書き間違えることはあっても、言い間違えることはないでしょうに」
その後しばらく平はテーブルに額をぶつけたまま動かなかったが、五分程して額の赤くなった顔を上げた。
「鍋蔵、マルチーズはまだか。マルチーズ、マルチーズ、マルチーズ、マルチーズ」
その声が聴こえたわけではないだろうが、マルチーズと連呼する平の横に料理を持った店員が来た。
最初のコメントを投稿しよう!