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「お待たせしました。マルチーズのシチュ、んっんん。ウサギのシチュー・マルチーズスタイルでございます。お飲み物はよろしいでしょうか?」
店員に二人とも「大丈夫です」と答え、テーブルの中央に置かれたシチューと対峙した。
「ねえ」
「あの。あ、平課長どうぞ、多分同じことを考えているんだと思いますけど」
店員が去った後に同時に口を開いた二人が、顔を見合わせていた。
「これって、実はマルチーズの肉とか、ってあるわけないから、鍋蔵、お先に召し上がれ」
「はあ。まあ、匂いはいいですね。じゃあ、遠慮なく」
ウサギの肉など初めて食べるし、ましてやマルチーズの肉など食べたことがあるはずもなく、食べてみたところで何の肉か判別できない真鍋だったが、一口食べた後に発した言葉には疑いようもない真実味が溢れていた。
「旨いですよ、これ。めちゃくちゃ柔らかいです」
腕組みをした両肘をテーブルに乗せ、前のめりに真鍋の食べる様子を見ていた平が小さく溜息を吐いた。
「鍋蔵って、何でもおいしそうに食べるのね。感心するわ」
「実際旨いんだから仕方がないですよ」
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