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顔を少し斜めに傾け、柔らかい笑顔を浮かべながらそう言った平に、真鍋は体重をやや背もたれに預け、顎を引いた。簡単に言えば、年甲斐もなくかわい子ぶった平に引いた。真実を言えば、平を可愛いと思ってしまった自分に引いていた。
「ま、まあ、恩返しだと思って下さい。返せるかどうかは分かりませんけどね」
「鍋蔵も偉くなったもんだねぇ」
「なんだかんだ言って、曽我部長の落語、結構好きなんじゃないですか」
「まあね。みんな好きよ。会社そのものもね」
また少し胸が高鳴った真鍋は、アルコールのせいにしようと、グラスに残ったワインを飲み干した。
マルチーズがマルタ島原産の小型犬ではなく、マルタ料理を意味する言葉で、ウサギのシチューがマルタを代表する料理であることを二人に教えたのは、帰りの電車の中で見たスマホの画面だった。
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