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普段、スケジュールの空白部分では、発注が落ちてきている店舗などから順に顔を見せに行くのが常だが、仕事の優先順位としては低い。総務から仕事を頼まれれば、そちらを優先するしかなかった。
そして、今日の安部のスケジュールは、三時まで真っ白だ。
「と、いうわけで、今日は営業事務の派遣さんも休みだから、発注受けたら安部君が入力しておいてください。それと、電話も当然全部出ること。今日は代表電話もここで取れるように主装置の設定を変えてもらっていますから」
伝える事を伝えて帰ろうとしている真鍋を、安部が悲痛な声で呼び止めた。
「ちょっ、ちょっと待て下さいよ。代表電話って。休んでいるの、営業部の皆だけじゃないんですか?」
「え? ああ、そうだよ。社長もお休み。指導課長の平さんだけは出社しているけどね」
「平課長だけ? もしかして俺に対する嫌がらせッスか? こんなハラスメント聞いたこともないッスけど」
さすがに頭の回転が速いようで、企みに気付いた様子の安部と、やはり最初は嫌がらせだと感じていた昔の自分を思い出して、真鍋は苦笑した。
「ハラスメントじゃないさ。それを証明するのは安部君自身だけだけどね。じゃ、そういうことで」
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