第4話 いざ始動

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「は? なんッスか、その名前。はあ、もういいですよ。なんか俺にやらせたいことがあるんでしょ? 何すればいいんッスか?」  打ってもまるで手応えがない。暖簾に腕押しとはこのことだろうな、などと思いながら、平は安部の要求通り仕事を与えた。 「ほら、お白州に模造紙を広げてあるでしょ? あれに安部君の会社に対する不満とか要望を書いてほしいんだよね」  それを聞いて安部は椅子に座ったまま背筋を伸ばし、お白州に視線を向けた。 「うわっ、模造紙とか久しぶりに見た」  その様子を見た平は、安部の大きな問題点を見つけて小さく頷いた。 「うん。懐かしいでしょ。で、もう一年半この会社で働いているわよね。何か不満とか出てきているんじゃない?」  そう言うと平は安部にマジックを差し出した。条件反射的に安部はそのマジックを受け取ったが、その後どうしたら良いか考えが追いつかない様子だった。 「そこに座っていても何も書けないよ。とりあえず模造紙に向かいなさい」
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