第4話 いざ始動

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「安部君。もしかしてさ、年休取得に理由は必要ないってことと、どんな理由で年休を消化しても構わないってことがイコールだと思ってる?」 「同じッスよ。どんな理由でも権利なんッスから、文句を言われる筋合いはないってことでしょ?」  こういう考えを持つ若い労働者が増えていることは平も知ってはいたが、ここまで自信たっぷりに言い放たれるとは予想外で、言葉を失いそうになっていた。 「そ、そっか。でもね、うちの会社がわざわざ理由欄を設けているのにはそれなりのワケがあるの。そう、これはね、会社から従業員に対してのお願い、要望なのよ。欄の下にも書いてあるでしょ? 理由は書ける範囲で詳しく書いて下さいって。安部君は会社に要望がないから、会社の要望にも応えてくれないのかな?」  平の少々回りくどい言い方に、安部は小さく舌打ちをした。「こいつ今舌打ちしやがった」と平は心の中で思いつつも、何とか笑顔を保った。 「今日ね、みんな年休取ってるでしょ。だから当然年次有給休暇届も出してもらっているのね。今後の参考になるか分からないけど、他の人がどんな理由を書いているのか見てみて」
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