第4話 いざ始動

17/21
前へ
/51ページ
次へ
 心に浮かんだこと。意識するとなかなか言葉にするのは難しいと感じた安部は、自分の部屋で、一人で漫画でも読んでいるような気分になってもう一度町田が書いた理由欄を目でなぞった。 「町田さん、割と女の子っぽいこと書くんだな。にしても、『自分探しの旅』とか、ちょっと古臭い」  安部はそう口にした後、とんでもなくバカな真似をやっているのではないかと、慌てて顔を上げて平の表情を見た。その安部の目に映った平は、満足そうな笑みを浮かべていた。 「どう? 中には知らない人も結構いたでしょうけど、少なくとも営業部の人たちのは顔を思い浮かべながら読んで、普段のイメージと比べたでしょ? 興味を持った人もいたりしたんじゃない?」 「ええ、まあ」 「それからもうひとつ。これはオマケみたいなものなんだけど、もし今日、どうしても人手が五人必要だったとして、この中から年休を別の日に変えてもらうようにお願いするとしたら、どの五人を選ぶか」 「五人、ですか?」  安部は平の言葉を聞いてすぐ、届けをもう一度流し見始めた。 「ねえ安部君、今何してるの?」 「え? 五人選ぶっていうから、もう一回見てるんですけど」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加