第4話 いざ始動

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「本当はそれもどうでもいいけど」  安部が考え出した要望は、いくつかあった。最初に口に出した給料を上げてほしいという訴えは、そう言われることを予想していたのか、平が用意していた経理の資料を見せられて諦めた。そもそも、安部は宮辺物産の給料に全く不満はなかった。ならばと、次に福利厚生の面での要望を上げてみた。例えば、従業員が使えるスポーツジムがほしい、安く使える保養施設がほしい、といった類だ。ところが、これらは安部が知らなかっただけで、宮辺物産専用というわけではないが、かなりの割引で使える施設が全国に数か所あった。 「今、どうでもいいって言った?」  平に聞こえないように言ったわけでもなかった安部は、素直にそれを認めた。 「ええ、言いました。なんとか絞り出した要望、っつうか提案ですけど、通ったところで影響ないかなって」  安部は頭の後ろで手を組み、模造紙の中央に書かれた文字を眠そうな目で見ていた。 「そうかな。私はなかなかの提案だと思ったけど。ま、この提案が通ったら、また安部君の感想も変わってくると思うよ」 「そうッスかね」  ――屋根看板は看板として外に掲げたし
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