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午前中の囲碁の対戦で一勝二敗と負け越した宮辺は、曽我、平、安部の三人に会社近くの蕎麦屋で昼食をご馳走して帰った。残る三人が会社に戻った時、ロビーに飾られてある屋根看板が安部の目に留まった。安部にとっては単なる思い付きだ。平が安部に要望を絞り出させたのも、会社の事を考えるきっかけにしたかったのだろうと安部は理解している。要望の内容など何でも良かったはずだ。
「よし! じゃあ、帰るか!」
平が手を叩いて身体の向きを変えると、安部もそれに続いた。
安部の目の前で、スキップ寸前の軽い足取りで歩く平の後姿がある。左右に揺れるウェーブのかかった長い髪を何となく見ていた安部の歩調も、平に釣られて軽くなっていった。
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