第1話 身勝手社員を指導せよ

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「ん? ああ、狂ってないですよ。曽我部長が来られるそうです」 「おまる」 「田丸です」 「私帰る」 「指導課長がそれじゃ駄目でしょ」  平は盛大に嘆息して、スポーツ新聞の上に突っ伏した。 「曽我部長苦手なんだよなぁ。ふざけた顔してふざけたこと言うくせに、変に真面目だから」 「私はあなたが苦手ですよ、平課長」  田丸の言葉に平が勢い良く身体を起こすと、緩くウェーブのかかった長い髪が、平の顔の半分を覆った。 「おまる」 「田丸です」 「部長だからって、私より偉いと思ってるのね」 「部長だからあなたより偉いんですよ。ほら、曽我部長がいらっしゃいましたよ」 「えっ? 早っ」  平が振り向くと、片手に赤いケトルを、もう片手にネルをセットしたカップを持った曽我が、ドアを腰で開けて姿を現した。 「失礼しますよっ、と」  平がその姿を見てスポーツ新聞を畳むと、そこにできたスペースに、曽我がコーヒーカップを置いた。カップの中は空だ。 「向こうで淹れていたら逃げられてしまいそうで。いやあ、昨日死んでいらしたわりに今日もお綺麗で」
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