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平の姿を認めた宮辺が、パターのグリップを出っ張った腹で支え、アンパンを手に取り、胸を拳で素早く八回叩いた。
「社長の中のリトルピカイチにお伺いのノックですか?」
忙しいと言いながら遊んでいるとしか見えない宮辺に、平は嫌味たっぷりに口撃した。宮辺はそんな平を睨みつつ、デスクの湯呑を掴んで、ぬるくなった茶を喉に流し込んだ。
「平君」
「はい」
「キミ、社外でも私のことを『ピカイチ』とか言っとるだろう?」
宮辺の睨みにも、平は平然としている。
「いいえ。でも、社長のお名前と、その実に美しい頭を見たら、誰でもそう呼びたくなりますわ」
平は、まだ頭の片隅に残る医師の言い草を真似て言った。
「で?」
「は?」
「用件は?」
「ああ。あの、その前にさっきのノックノックジョークはスルーですか? 『カヌー』と『キャンユー』の発音が似ていてですね」
「何度も言わせるな。私は忙しい」
宮辺は胸を張ってそう言うと、残りのアンパンを口に放り込んだ。
「ま、いいですけどね。じゃあ本題ですが、木曜日辺りにオペレーション・ボッチを実行しますのでご協力をお願いします」
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