2、好きを挟んだサンドイッチ

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「それじゃ、私たちはお暇しようか。邪魔しちゃ悪いからねー。風香ちゃんまたね!」  一華は立ち上がると、西条さんに手を振った。俺も慌てて立ち上がって、小さく会釈をして手を振る。そして一華を追いかけて隣に並んだ。 「……急に別れたけど、あれでいいのか?」 「いいんじゃない?いつもあんな感じだし、冷たい人だなとか、今さら思わないでしょ」  それからはメンズ服の店をはしごして、俺が気になったものや、仕立て屋目線で一華が気に入った商品を買っていった。  紙袋を両手に持って歩きながら、俺は一華に訊く。 「俺の服ばっかり買ってるけど、一華はいらないのか?付き合わせて申し訳ないし、何か欲しいものがあったら寄るけど」 「私は今あるもので充分。咲也は付き合わせてるって言ったけど、私は結構楽しんでるよ」 「そうか、ありがとう。……あと、この服代はいつか全額返すから」  財布を実家に置いてきてしまったため、今所持金がない。そのため一華が支払ってくれているのだ。 「それも気にしないで。咲也は家事全般やってくれてこっちは助かってるから。それは私からのお礼だと思ってよ」  そう言われても、俺の気が済まない。いつか必ず返そうと心の中で誓った。 「さて、そろそろ帰ろっか。その前に夕飯買いにデパ地下寄る?今日はゆっくりしたいでしょ?」 「あ、いや。俺は大丈夫。帰ろう」  俺は、人混みの中に飛び込む前に気合を入れ、一歩踏み出す。だが一華に袖を引っ張られた。 「そっち遠回りになるから、こっちから帰ろう。人少なくて近道だよ」  と、俺が向かおうとした反対方向を指差した。 「え?近道知ってるなら、何で行きは遠回りしたんだ?」 「……今は安全だから言うけど、行きの電車から跡をつけられてた。だから人混みを選んで遠回りしたんだよ」 「え……。つけられてたって……」 「尾行されてたってこと。さっきの電話の相手は、私が信頼できる人からの連絡。内容は、尾行相手は人混みで私たちを見失って、今も探してるって報告だった」  いきなりのことで頭が混乱する。一華の表情は真剣で、冗談を言っているようには見えない。 「その、尾行って、まさか俺の……?」 「うん。多分向こうは、こっちのことを探っているんだと思う。私がどういう人なのか、咲也はどんな生活を送っているのかをね」  そして、調べ尽くして弱みを握り、俺を連れ戻す作戦なのだろうと一華は言った。
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