1、フライドポテトは分け合って

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 女性の質問に答えないとと口を開けるが、歯をガチガチと鳴らすだけで、話すことができなかった。 「大丈夫じゃないってことだね。とりあえずお店の中に入ろうか。立てる?」  さっき足を捻った左足を動かしてみる。しかし、少し力を入れただけでズキリと痛んだ。  立てないという意思表示で首を横に振ると、女性は俺の左腕を掴んで肩に回した。そして持っていた傘を差し出してきた。 「肩貸すから傘は持って。それじゃ、せーので立つよ。いくよ、せーの!」  掛け声と同時に無傷の右足に力を入れて立ち上がった。そして女性が濡れないように傘を傾ける。二人でゆっくり進んで、無事店の中に入った。女性は俺から離れると、丸椅子を持ってきた。 「服濡れてて気持ち悪いかもしれないけど、この椅子に座って待ってて。手当てするから」  大人しく椅子に座る。女性は店のカウンター奥にある引き戸を開けると、上を向いて大声で言った。 「伊織(いおり)ー!あんたの服とタオル、あと何か温かい飲み物持ってきてー!」  何を言ってるのかは分からないが、さっきの言葉に答えているのだろう、上から男の声が聞こえた。その会話が終わると、女性は店の奥に入っていった。  俺はフードを取って店の中を見渡す。ここは雑貨屋なのか、アクセサリーや小物類が店の中に所狭しと並べられている。しかしその中でも服が大量に吊られている。服屋としても経営しているのだろうか。  ぼんやりと店内を見ていると、奥から女性が戻ってきた。手には救急箱を持っている。そして俺の前まで来ると膝をついた。 「さっきの様子だと、怪我してるのは左足だよね。ちょっと失礼」  と、断りを入れたあと、俺の靴を脱がせてズボンの裾を捲り上げた。 「うーん。足首が腫れてるから多分、捻挫かな。湿布貼っておくね。他に怪我してるところはない?」 「他は大丈夫です。ありが……」  湿布がひんやりして気持ちよかったのか、それとも暖房の温度が眠気を誘ったのか、体から力が抜けてしまい、気を失うようにして眠りについた。
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