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1.羽澄愛結の秘めごと
熱い吐息と熱った身体が触れ合って、溶け合って、重なり合う。
無意識に顔を横へと背けながら甘ったるい声を上げていれば、顎先へと伸ばされた手によって、無理矢理顔を上向きにされた。
固く閉じていた瞼を上げると、光を一切通さないような闇色の瞳が私を見下ろしていた。
そこで一気に現実を思い知らされる。
こんなに甘い吐息を吐いているのも、心も体も熱くしているのも、私だけだということを。
息を乱すことなく私の上で動いている男へと縋るように腕を伸ばすと、触れたその身体は恐ろしいほど冷え切っていた。
ひんやりとした指先が私の身体の線を妖美になぞる。
たったそれだけでぴくっと身を捩らせた私を嘲笑うように、口元だけを歪ませた彼の指先は腰元へと添えられた。
冷え冷えとしているのは身体だけじゃない。
交わる視線の冷たさに、きゅうっと胸が苦しくなる。感情を読み取らせてはくれない、その無機質な瞳が私は苦手だ。
再び瞼を固く閉じると、その行為を咎めるように私を責め立てる動きは激しさを増していく。
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