1.羽澄愛結の秘めごと

5/16
前へ
/136ページ
次へ
21歳、華の女子大生。友人たちが恋愛を楽しんでいる中、私だけが真っ暗闇を彷徨い続けている。抜け出したくても出口さえ見つからない、永久に抜け出すことのできない闇。 なーんて、感傷的な気分に浸ってみる。 悲劇のヒロインぶったところで、成とのこの関係を断ち切れないのも、本心を伝えられないのも、全部自分で選んだことに変わりない。全部、自業自得なんだ。 「愛結、この後の予定は?」 私が闇落ちギリギリで耐えていることなんて知る由もない成が、欠伸交じりに口を開いた。 数少ない女友達と家族、それと公式アカウントからのメッセージのみで埋め尽くされたトークラインを開く。 「夜に友達と会う約束してるから、ちょっと昼寝したら出ようかな」と告げると、スマホを見ていた成の視線が私へと移った。 「男?」 「そう」 「散々ヤったのに凄いね、お前の体力は」 「女は男と違ってヤろうと思えば1日に何度でもできるからね」 「やっぱくそビッチ」 「はいはい、なんとでも言ってくださーい」 "私には成だけだよ" この言葉を吞み込み続けて3年。ビッチと偽り続けて3年。口からは躊躇いもなく、スラスラと嘘の言葉が吐き出される。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加