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ここでようやく、スマホ画面から目を離した成と視線が対峙した。
やや笑い交じりに放たれた一言。その言葉は、ギリギリのところで耐えていた私を一気に地獄の底へと叩き落した。
表情を取り繕うことも、瞬きすることも、息を吸うことさえ忘れてしまう。
お互い寝転んだまま数秒見つめ合ったのち、ふい、と視線をスマホへと逸らした成は指を動かし始めた。
連絡を取ることを異常に面倒臭がるあの成が、軽やかな指の動きでメッセージを打っている。
成の性格を理解していた私は負担にならないように、必要最低限の連絡だけしようと心がけていた。だから私たちのトークラインは短い文が飛び交うそっけないもの。
そうか。
成は彼女相手だと、こんなに生き生きと楽しそうにメッセージを送るんだ。
あまりにも食い入るように見つめていたからか、再び私の方へと顔を向けた成。軽く放心状態で固まったままの私を視界に入れると、ふっと乾いた笑いを零した。
「なに?」
「……」
「愛結?聞こえてんの?」
「……本気、なの?」
「は?なにが」
「彼女ができたって」
狭まった喉から絞るように出した声。私の異変は目で見て分かるはずなのに、私に興味のない成は全く気付いてないようで。
何やらスマホを操作した成は、そのまま画面をこちらへ向けてきた。
「これ、俺の彼女」
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