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「とても真面目で、仕事熱心で、町民からの信頼も厚いですね」
「ほう。つまり、堅物というわけですか。悪い言い方をすれば、融通が利かないタイプですかな」
葛城の挑発ともとれる言動に気分を害することもなく、課長は淡々と答えた。
「まあ、刑事さんのおっしゃる通りかもしれません。もう少し、肩の力を抜いて仕事をしてもいいと思っとります。一つのことにとことん、のめり込むところがあります。でもまた、そこが高岡くんのいいところでもありましてね」
「ほう、例えば、課長さんから見たら、どんなことが一本気に見えましたか?」
「ああ、例えば、小学校の子どもどうしのケンカの仲裁に入ったり...」
「やたらお節介なところもあると」
すると、先ほどまで穏やかだった課長の目つきが変わった。
「刑事さんは何が言いたいのでしょうか?」
「いいえ。他意はありません。ただ、わたしの長年の経験から申し上げるとすれば、高岡くんのような人物は衝動的に何かをやらかしてしまうということです」
葛城は壁に貼ってある町のポスターを眺めた。
ポスターには天使が町のシンボルでもある教会の上を舞っている。そして、大きな文字で「ようこそ、平和の町、円寿町へ。人類最後の楽園」と記されていた。
「課長さん、もし、高岡ウメさんの死が自殺ではなく、殺人だったら、ポスターを刷り直さなくてはなりませんね」
葛城は最後まで皮肉たっぷりだ。
遺体発見現場の黄金川沿いの道に一軒の蕎麦屋があった。
葛城と守谷は昼食をとることにした。
中は三分の二ほどの客の入りだった。葛城と守谷は小あがりに案内された。
相変わらず、この店の中にも、天使が教会の上を舞っているポスターが目につくところに貼りだされていた。
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