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「ユナさんはすごいですね…」
これが、青くんのそばにずっと居れる理由。
素直で、いい子。
妬ましい程、癪に障る程、虚しくなるほど、いい子。
堪えた涙がついにこぼれてしまう。私だってこんな風に温かな人間になりたかった。なれるならなりたかった。自信があって真っ直ぐで、気に食わない相手にもこんな事を言える子に。
「…何泣いてんのよ、あんた本当に暗い」
瀬戸くんに続きユナちゃんにまで言われてしまって「ごめんなさい、気をつけます」と笑うと、彼女はぷいと横を向いて照れたように顔を赤らめた。
「…なんかユナ馬鹿みたい。植草さん思ったより毒気ないんだもん」
「毒気、とは」
「あんたみたいなへなちょこ相手に威嚇して損したって言ってんの」
「なるほど?」
苦笑いを浮かべれば、ユナちゃんがお腹を摩り「それより」と口にする。
「ユナお腹すいた」
「…よかったら食べていきますか?」
うん、と頷くユナちゃんは、やっぱりとても特別だと思った。
料理を再開すれば、その横でユナちゃんは自分の家くらい寛いでスマホをいじっている。
「あんたの親いつ帰ってくるの?」
「ん〜、一誠さんは大体21時頃です」
「遅くない?ってか親の事名前で呼んでんの?」
「……親じゃないので」
私の一言に「え、、何それ」と絶句。
「遠い親戚なんです。私の後見人で」
「は?え、親は?」
「えっと…」と説明を考えていたら、ガチャガチャと鍵の開く音と一緒に「ただいま」と低い声。
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