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一誠さんの気配が完璧に消えると、ユナちゃんは不思議そうな顔で「あんたって本当に噂通り訳ありなんだね」と呟いた。
「まぁ、でも別に言わなくてもいいよ。そこまで興味ないし」
靴を履く彼女が玄関に座って背を向ける。
美人は後ろ姿でも美人って分かるんだなと大発見に感動していれば「サクとの関係は気になるけど…」と立ち上がった彼女が私を真正面から見た。クリッと大きな瞳には興味が満ちている。
「あんたには全然興味ないけど、サクといつから知り合いなのか気になる。なんでサクの名前呼んでるのかも気になる。サクがあんたと付き合いたい理由も気になる」
「それは、その…」
「ついでにあんたが年上って言うのも気になるし、転校してきた本当の理由も気になる。親不在も気になるし、一誠さんも気になる」
でも、と恥ずかしそうに俯いた。
「ご飯美味しかったから、今日はそれでいいや」
そしてふ、と笑うと「じゃあね菜乃花。また明日」と手を振って言い逃げのように去っていった。
「っ、」
何あの可愛い生き物。
不覚にもキュンとした。女の子相手に。でも私以外だって、絶対キュンとするに決まってる。
私も嬉しさや恥ずかしさで、小さく「うん、」と声を振り絞った。もう聞こえないだろう彼女の後ろ姿に声をかけた。
「バイバイ、ユナちゃん。明日ね」
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