176人が本棚に入れています
本棚に追加
*
学校への足取りがいつもより軽いのは明らかにユナちゃんのおかげな訳で。
何か言われても私が直接「付き合ってない」と否定すればいいし。青くんの事だ、直に美人な彼女ができて噂だって消えるだろう。青くんの元カノなんて昨日の晩御飯なんだったっけ?くらいの軽さで話されるんだから、付き合ってもない私なら秒で忘れられるはず。
明るい展望に希望を持って学校へ辿り着いた私を待ち受けていたのは。
「おい、菜乃花」
不機嫌な顔で立ちはだかる青くんだった。
昇降口。下駄箱に寄りかかる彼は絵のようだ。嫌な予感がしつつも無視するなんて選択肢はないので、「青、くん…おはよう、ございます」と挨拶をしたのに、名前を呼んだきり彼は一向に口を開かない。
「…あの」
始業のチャイムがそろそろなりそうだ。
遅刻ギリギリの時間帯。駆け足の生徒達が私達2人をみて一瞬足を止める。人数が少ないならまだしも、それなりにたくさんの生徒が同じように立ち止まっては後ろ髪引かれた様子で各々の教室に向かっていた。
また噂になりそうだと小さくため息を吐けば、無言で手を伸ばしてくる青くん。
「え、、と?」
頭にハテナマークを浮かべて戸惑っていれば、その手が更に伸びてきて私の手首を掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!