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そのまま歩き出すので、引き摺られないように付いてく。
階段を登って廊下を進んで。通りすぎた人達が何度も振り返る。注目を一身に受ける青くんが教室のドアを開ければ、笑顔を向けるクラスメイトが「サク、おっはー…えっ?」と瞬時に戸惑いの声。
なにせ始業前。殆どの生徒はすでに教室内にいる。
人が避けてポッカリと空いた私の席まで連れて行って、肩に手を置いて強制的に座らせる。状況が飲み込めず青くんを見上げれば、一瞬だけ絡んだ視線はすぐに逸らされて、何の説明もなく彼は自分の席に着いた。
「え、まじ?噂本当だったの?」
「サクの本命ってやつ?さすがにないだろ。サクだよ」
「でも、手繋いでた」
「誰か聞いてこいよ」
人生で一番と言うほど注目されている中、勇気を出した誰かが私に話しかけようとした直後に「出席とるぞー」と担任の姿。それに大きく安堵のため息をついた。授業の始まりをこんなに待ち望んだ事もない。
一体青くんは何を考えているのか。癖のように青くんを盗み見れば、彼もまた私に視線を向けた。
昔はもっと喜怒哀楽の分かりやすかった表情は、今は怒りを除いて分かりにくい。私はもう、青くんの考えが何一つ分からない。
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