甲子園

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甲子園

 ずっと、夢を見ていた。  彼とキャッチボールしている夢。  彼と私は、小学生まで野球をしてた。  地元のクラブチームに入って、お互い、同じポジションで。  中学になって彼は野球を辞めたけど、それまでは日がな一日野球三昧だった。  家庭の事情で両親がいなくなってから、彼は学校にもまともに来なくなった。  でも、グローブだけはいつも、彼の部屋の中にあった。  カピカピに乾いて、使いものにならなくなっちゃけどさ?  子供の頃は、お互い同じ夢を見ていた。  「甲子園に行く」  なんて、大口を叩いて。  でも、ここだけの話、悪くないかもって思えたんだ。  野球を続ける気はなかったけど、あの頃は、男も女も関係なかったし。  キーちゃんが地元に帰ってくるって話になって、高校では野球をまた始めることになった。  中学じゃバスケをやってた。  通ってた中学には、女子野球部がなかったから。  『甲子園』    3塁アルプス席券の下には、「出場校専用」の文字が入っていた。  大会第3日目。  どの高校のチケットかはわからなかったけど、それが甲子園行きのチケットであることは間違いなかった。  全国高等学校野球選手権大会。  その文字が、チケットの上部に書かれていた。
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