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あれから、月日は流れた。
どれくらいのスピードで進めば、もう一度彼に会えるだろう。
どれくらいのスピードで歩いていけば、もう一度「亮平」と呼べるだろうか。
キーちゃんと急いで乗ったバスは、いつの間にか海の景色を横にしていた。
ここがどこの海なのかは見当がつかない。
須磨の海はここから遠いのだろうか。
この海はどこに続いているのだろうか。
私は、しばらく病院に通い続けてた。
学校を休む日もあった。
今にも亮平の目が覚めるかもしれない。
そう思うと、一日でも早く目を覚まして、歯みがきをする。
206号室に向かう。
今回のテストは、すごくいい点数だったんだよ?
彼とお揃いのキーホルダーを買ってみた。
肩にかけたショール。
思いきって買ったジーンズはピチピチで、少しだけ痩せようと夜の炭水化物を避け始めた。
あれから私のそばで、色んなことがあった。
いろんな気持ちの変化があった。
色とりどりの日常を切り取って、剥がれた部屋のポスター。
模様替えしたカーテンの色。
今すぐに目を覚ませば、私は彼に向かって笑顔でいられる。
今すぐに目を開ければ、元気な姿を見せられる。
少しだけ部屋の温度を下げよう。
季節が移り変わって新しい夏。
私の高校生活も、もうすぐ2年目になる。
冷房の効いた部屋のなかで、「暑くない?」、そう細やかに話しかける。
私は元気だよ。
亮平はどう?
あれから何度か、病院の部屋が変わった。
部屋の窓から見える景色が変わった。
ベットの横で教科書を開いて、一緒に勉強している気になった。
学校を休む代わりに、「病院で勉強します」って先生にお願いしてみたら、すんなりオッケーをもらえたから、目が覚めたときは、私の代わりにきちんとお礼を言っておいて。
ほら、私は人見知りだしさ?
面と向かって、明るい一言をアップテンポで言ってみてよ。
バカみたいにだらしない格好で、自由気ままに生きている亮平の姿を、今すぐにでも見たいから。
ねえ、亮平。
今はどんな夢を見てる?
私が隣にいることはわかる?
いつの間にか、誰が見ても痩せている体になったね。
着ているパジャマがブカブカだね。
体の垢を拭き取ってあげる。
目が覚めたときに、少しでも嫌な思いをしなくて済むように。
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