陽だまりの午後

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 怒鳴り散らすように。  宛のない返事を待つように。  亮平が目を覚まさないこと。  それが彼に会わない理由にならないのはわかってる。  だけどどうしようもないこの心が、峠を越えないまま、今も変わらずに待ち続けてる。  彼の帰りを。  「どんなスピードで走っても、もうあんたの願いが届かないとしたら」  私はハッとしたようにキーちゃんを見た。  でもそれは、今までの自分が間違っていたことを自覚したからじゃない。  むしろそれは、反論だった。  願いがもう届かないっていうことを、心から否定したい衝動だった。  「キーちゃんはそう言うけど、私は待っていたいんや。あの日、あの事故に遭った後の電話で、彼は私に何かを言いかけた。未来から来たこと。違う世界から来たこと。そんなバカみたいなセリフが、耳の中に残ってる。だけど…」  あの日、彼からの電話。  雨が降る前の街の喧騒。  聞き慣れたメロディー。  プルルルルル……ピッ  「…よぉ、楓」  「どうしたん?」  「ちょっとしくじってな…」  「しくじったって、…なにを?」  「…まあ、こうなることは運命やったんやが…」  「…は?何言ってんの?」  「…足が動かんのや。でも、大丈夫やから」  「足…、場所は?事故ったの!?」  「今高速道路にいる。救急車も呼んだ」  「今は一人?」  「…いいや、友達がおる」  「亮平、今教室を出た。先生にも言った。母さんにも今から連絡する!」  「楓…」  「もしもし、もしもし!」  「…楓、よぉ聞いてくれ。この前言ったことを覚えとるか?」  「…この前?」  「一緒に岡山に行ったやろ」  「…ああ、うん」  「説明が足りんかったのは謝る。誰だって信じられんよな。あんな話」  「…ええから、今は喋らんほうがええって!」  「最後かもしれんから、ちゃんと聞いてくれんか?」  「…最後とか言うな!今行くから!」  「俺からの頼みや。聞いてくれ」  「………何?」  「俺は未来で、ずっとお前を探してた。諦めとったんや。どう頑張っても、お前がいなくなる世界しかなくて」  「私が…?」  「この世界できっとお前は、幸せになれる。それは確かや。ようやく方法がわかったんや。せやから、心配いらん」  「…何、…言って」  「俺のことはもうほっとけ。俺たちは最初から、出会う運命になかった」  「…ほっとけるわけないやろ」  「ハハッ。どうせ俺のことなんてすぐに忘れるくせに」  「アホなこと言っとらんと、安静にしときぃ!」  「…もし、俺の身に何かあったとしても、大丈夫や。お前はこれから先、明るい未来が待っとる。俺が保証する」  「…」  「ただ、一つだけ言わせてくれ。俺は…」
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