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「そうか、それなら今日はゆっくりできそうだね」
「ま、あるとすりゃあ飛び入りの客くらいなもんか」
二人の話に割って入るように、店の電話が鳴る。
あまりにも出来すぎたタイミングの電話に驚きながら、廻は立ち上がった。
バタバタと走り、鳴っている電話を取った。
「はい、こちらさやま……え? はい、行っていますが……ちなみに品の方は……はい……はい、少々お待ちください」
会話に聞き耳を立てていた義時は、何かピンとくるものがあった。
何となくだがこれは『裏口』の客だろうな、と。
戻って来た廻の表情は、先ほどよりも少し暗い。
それだけで電話の内容が、喜ばしいものではなかった事を推し量るには十分すぎた。
「……査定の依頼だ」
「品物は?」
義時の嬉しそうな、何か含みのある笑みを見て、廻は小さくため息を吐いた。
「……箱だとよ、何やら曰く付きの」
二人の穏やかな朝に、一筋の黒い影が差し込まれた瞬間だった。
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