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「……よくこれを祠から取り出せましたね」
「とんでもない、私も気味が悪くて触れませんでしたよ。結局あれを見つけてからは業者に依頼して片づけをやってもらったんです。そしたら作業者の方がこれを……」
ひどく迷惑そうな顔でそう話す武を見て、なるほどと廻は一人納得していた。
あの箱を持ってこられた時の武の感情は、想像するに難しくない。
良かれと思って持ってきた作業者の善意を無下にする事もできない、かといって捨てるにも持っておくにも気味が悪い。
電話で何とか早めに買い取って欲しいとすがりつくような声を、廻は思い出していた。
そんな時、隣にいた義時が静かに箱を机の上に置いた。
「どうですか、何か分かりましたか?」
「状態は非常に素晴らしいの一言です。日光や湿気による劣化もほとんど見られない、加えて表面に描かれた模様も見事なものだ」
そう言った後、義時はもう一度箱を手に取り武に見せた。
「ただ、これが何なのかはまだ分かりません。何を目的として作られたのか、なぜ祠に納められていたのか、何よりもこれの中身は何なのか。まだまだ分からない事だらけです」
「それは分かった方がいいのでしょうか?」
「そうですねぇ……もちろん今すぐ買い取る事も可能です。ですがこの箱の曰くやルーツを明らかにした方が値段は上がります、そういった背景を込みで商品を買って行かれる方も多いので」
「な……なるほど」
「無理にとは言いません。ですが箱に関する調査をご希望なら我々に任せて頂きたい。もちろん調査料などは頂きません、三割ほどは個人的な興味もありますから」
そんな言葉と共に、義時は甘い笑みを浮かべた。
そしてその隣では、廻が気付かれないように口元を歪め訝し気な視線を彼に送っている。
何が個人的な興味が三割だ、低く見積もったって八割だろうが。そんな言葉を必死に飲み込み、廻も隣で人当たりの良い笑顔をつくった。
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