1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……分かりました、箱の調査をお願いします。ただ一つだけお願いが……」
「なんでしょう?」
「調査が終わるまで、この箱を預かっていては頂けませんか? 売りたいと言うのはお金のこともありますが、何より手元に置いておきたくなくて」
「それは構いませんが……やはり気持ち悪いですか。これは」
「見た目は綺麗なんですよ、でもどうしても持っていたくないんです」
「分かりました、では調査が終わり次第また連絡いたします。少なくとも一・二週間はかかりますので」
「構いません、よろしくお願いします」
必要な書類と連絡先、そして義時のした質問にいくつか答えた後、武は帰って行った。
来るときに持っていた薄気味の悪い箱を持っていないからか、彼の足取りはいくぶん軽く見える。
彼が帰り、二人になった義時と廻は箱を前にして冷めきったお茶を啜っていた。
「で? どうするんだこれ、どこから調べ始めるかの当たりはつけてるのか?」
「まあね、ただ少し時間はかかるだろう。所有者は亡くなってるし、祠のあった家ももう更地だ。僅かな手がかりを辿っていくしかないね」
「まあやるだけやるか、んで最初はどこだ?」
義時は、先ほど武と話をした時に書いた紙を廻に見せた。
そこには、ひとつの電話番号が書かれている。
「山城マツの家を更地にした業者だ、あの箱を祠から取り出した人間のいるね」
廻はその言葉を聞くと、一つため息を吐いてからソファーから立ち上がる。
そして電話番号の書かれた紙を受け取ると、電話の方へ歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!