コドク箱 1

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「おーい、朝飯できたぞ」  廻が義時を呼びに行くと、ちょうど彼も作業を終え奥へと引っ込んできたところだった。   「待たせたね、それじゃあ朝食を……」  そこまで言いかけて、義時は鼻をすんと鳴らす。   「……これは期待できそうな香りだね」 「だろ?」  二人は意気揚々と台所へと向かった。    食卓に並べられた朝食に手を合わせてから、二人は食事を始める。  白い蒸気を立ち上がらせる白飯と味噌汁、そしてうっすらと焦げ目の付いた焼き鮭。  これぞまさしく日本の朝食、と言っても差し支えの無い光景が二人の前にはあった。    義時は目の前に置かれた白飯を、躊躇いなく口へ運ぶ。  口内で米がその形を失うまで噛みしめた後、ペースト状になった白飯は多幸感を引きずりながら胃の中へと落ちていく。   「うん、美味しい。文句のつけようが無い出来だ」  そう言って笑う義時の顔を見て、廻はふうと尾を引くような安堵のため息を吐いた。 「そいつは良かった、今日の出来栄えはかなり自信があったからな。これで駄目だと言われたどうしようかと思ったぜ」  残りの味噌汁と鮭も好評で、義時は美味しいと繰り返しながらペロリと平らげてしまった。  廻は一人の時の食事風景をぼんやりと思い出しながら、こうも喜んでくれるのなら食事を作るのも悪くないなと思いつつ、自分も朝食を口の中へと放り込んだ。
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