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コドク箱 2
「どうぞ、お掛けください」
電話の主である山城武が店を訪れたのは、約束の時間よりも少し早い昼前の事だった。
軽く自己紹介を済ませてから、義時に促され武はゆっくりとソファーに座る。
廻は彼と自分、そして義時の分のお茶を用意し、彼に向かい合うように義時の隣に座った。
武は、どうにも落ち着かない様子で視線を泳がせる。
年の頃は四十半ばくらいだろうが、白髪交じりの短髪のせいでもう少し老けて見える。着ているブラウンのスーツはやや年季が入っているが手入れが行き届いており、そこに彼の人間性の一端が垣間見えるようだった。
「今日は急な申し出を受けて頂いて、本当にありがとうございます」
武はソファーに座るや否や、二人に深々と頭を下げる。
彼のおどおどとした態度は、こういった場所に慣れていない事もあるが、何よりも急な買取査定を承諾してくれた二人への申し訳なさから来るものだった。
「いえいえ、お気になさらず。今日は他に予定もありませんでしたし、何よりうちの従業員の話によればずいぶんとお悩みにのようでしたから」
そう言って義時は口元に薄い笑みをつくる、それを見た武は少しばかり肩の荷が下りたらしく、ほっと胸を撫で下ろしていた。
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