彼は死ぬだろう

彼は、死ぬだろう

彼は、この世に産み落とされて、母親にゴミ箱へ捨てられた

そして、清掃員に発見されて、養護施設で育った

彼は、言葉を話すことなく

彼は、誰にも愛されることなく

また、誰も愛することはなかった

彼は、大人になり

清掃員になった

ゴミ箱を毎日、見て周り

自分のように捨てられた子供がいないか探した

しかし、いなかった

彼は、それを望んでいたのだ

自分だけではない誰かを探していた

いつも寂しくて

でも、どうしようもなくて

生きていくしかなくて

彼は、ある日、ゴミ箱の中に、袋に入った白い粉を見つけた

彼は、それを家に持ち帰った

しばらくすると

家に知らない男たちが来た

男たちは、彼を殴り、脅し、白い粉を出せと言った

彼は、分かっていた

これが、人々を苦しめる粉であることを

だから、彼は男たちに抵抗した

男たちは、彼の身体中をナイフで抉った

それでも、彼は、耐えた

自分が誰かを苦しめることはしたくなかった

やがて、男たちは去った

彼は、血だらけで立ち上がり、外へ出た

外は晴れて、空は青く、空気は澄んでいた

彼は、嬉しかった

彼は、誰かを守ったのだ

彼は、倒れた

だが、また立ち上がった

歩き出す彼の足元に

美しい花々が咲いた

それは、彼の足跡になった

彼は歩き続けた

彼は、いずれ、死ぬだろう

だが、花は咲き続ける

end