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それは引越ししてから始まった
大好きなパイレーツ・オブ・カリビアン。
オーケストラのやつを聴くのが好きだった。
そしたら、コンポの音量が徐々に大きくなる。
『ん? 故障かな?』
単に調子が悪いんだと思ってボリュームを落とした。
だけど、本当に故障なら常にそうなる筈なんだけど、1、2週間空けてとか、不意打ちで音が小さくなったり大きくなったりする。
ちなみに、とめなきゃ音量MAXまで上げ下げされます。
それでも最初はやっぱり故障だと思って気にしなかった。
ただ、冷静に考えてみたら……なんかおかしい。
いつもわたしがひとりで部屋にいる時だけ、ちなみに愛犬だけは一緒にいた。
でも他の人間がいる時には起こらない。
ある日、その時も異変が起きた。
ボリュームがジワジワあがっていく。
ダイヤル式だったんで、ダイヤルがゆっくりと回るのを見てゾッとした。
愛犬もびっくりしてコンポをじっと見てた。
さすがに恐くなって電源を抜いた。
そんな事が起こる中、たまたま前に住んでた人が置いてた神棚の中を見た。
中古住宅を購入したので、今は使われてない神棚がそのままある。
その神棚の中央、扉を開いてみると中から封筒が出てきた。
茶色い封筒には赤い字で『この手紙は末代まで大切にしてください』と書かれてあった。
『うわっ、なんか普通じゃない』
そう思って中を確認させて貰った。
すると数通の手紙と軍事郵便のハガキが入ってた。
軍事郵便が無性に気になって、それは1番最初に読んでみた。
ハガキの内容はフィリピンでの戦況が書かれていて、戦況が徐々に厳しくなる事、日本には2度と帰れぬ事が暗に書かれていて、最後に『姉さん、どうかお元気でご自愛ください』と結ばれていた。
恐らく、そのハガキは戦地からの最期の連絡になったと思われる。
この家の前住人は既に亡くなっている。
もしかして、このハガキに気づいて欲しくて、それでボリュームを弄ってた?
これは身内の人に渡した方がいいけど、事情を説明しなきゃならない。
ちょっと面倒だな。
なんて思ってダラダラしていたある日。
やっぱりひとりでいる時に、今度はDVDと電気が消えた。
えっ? 停電? って思ったけど、同じコンセントに繋がってる扇風機は動いてる。
またゾッとした。
もう勘弁して! と思って耳を塞いで体を丸めていると、数分後にDVDと電気がついた。
これは、早く送れって事かな?
そう思って、その出てきた手紙達を前住人の身内に送る事にした。
戦地からのハガキ以外は親族からの手紙などで普通の内容だったけど、全部まとめて前住人の身内に送ってあげた。
すると、ボリュームの変化やDVDや電気が消えたりする事がピタリとなくなり、やっぱりそうだったんだなって思った。
人は死んでも、想いは残る。
だから、よっぽどの悪人は別として、たまには先に逝った人を思い出してあげると、きっと喜ぶと思う。
いずれ自分も逝くんだから。
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