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幸せではなく先の人生が続くだけ
男子高校生格闘家・輝平晋は細い筋肉質の自分が少し苦手だった。
女の子には声をかけられる顔でいられるのも格闘技をやっているからだとも言えるけど、どの格闘技も日本じゃ軽量級が全てと言われていてぶっちゃけ夢がない。
相撲とプロレスにあこがれていたのと、今は三十歳くらいでプロ格闘家ではなかったけど晋が子供の頃に池でおぼれかけていたときに助けてくれた男子高校生が柔道部出身と助けられた後に笑って話してくれた。
かっこよかった。
坊主頭で大きな身体。
たしかに世界で競えばその人はトップではなかったかもしれない。
それでも晋にとっては最強の漢だった。
2024年現在。
高校三年生となってプロの道へいくか大学へいくか。
または専門学校へいくか就職するか悩み続けていた。
他の格闘家友達には悪いが、今は学業に専念してプロ入りを目指そうとしている。
日本人、いまは軽量級、戦績もまずまず、将来設計と制限をかけた上でトレーニングを積むことが課題になり、はげみになる。
他の人達と比較して『あの子の環境だったら俺ももっと強くなるのに』と考えることもある。
だとしたら自分はどのように好きな格闘技へむきあうのか。
今、全国各地で書店の減少がさわがれている。
あまり表にはなっていないが
「幸せハラスメント」について授業にも出てくるくらいには別の権威によって問題視されている。
人間は馬鹿な生き物だ。
稼げないから自己啓発で幸せについて語っていたのでは?
おかげで映画やアニメでハマったダークファンタジーが女の子をおしつけている作品ばかりなになった。
小説や映画よりも漫画とアニメを楽しむようになっていまじゃSNSよりもブログに近いサイトのアカウントを持ってたまに書いている。
格闘家だからって馬鹿にされたくないとはじめた読書や漫画趣味だったが次は音楽をやりたくなるくらいには楽しい息抜きだった。
幸せハラスメントか。
なんか矛盾している。
晋たちが好きで産まれて好きに生きているわけじゃない以上、ギャンブルな結婚やハンデを背負う生活を送る人たちに配慮がない世界で幸せだと言う方がおかしい。
そもそも幸せな人には自己肯定感がどうのと精神科へ行かせるようにわざといじめる人間もいる。
そこで救いのない名言だの哲学だの仏教だの。
晋はそれらを読むことは好きだが鵜呑みにはしていない。
サンドバッグを殴って練習するたびに晴れない思いがうかんで考える。
「もう全部時代遅れだったりするのかな」
つい声に出てしまって先輩格闘家に声をかけられた。
笑われるかと思ったら飯をおごられた。
「幸せハラスメントか。 今さら高校生にそんな話してどうするんだよ。 今も昔もみんな病んでて変だ」
そこで晋は妻子持ちの先輩格闘家に聞いてみた。
「先輩は家庭があって、試合も勝ち進んでいる。 逆だったら幸せとは言わなかったんじゃない?」
せめすぎた質問だと反省した晋。
それでも先輩は笑って答えた。
「不幸ではないけど、逆の状態だったら成長するためにその時出来ることをしていたかもよ。 納得しているから卑下もしないし優越感にもひたらない。 弱さを知っているからこそ格闘家は強くなれるから」
晋は自分を救ってくれた高校生の面影を先輩格闘家から見た。
そうだ。
幸せかどうかなんて意味づけ。
「ありがとうございます。 なんか俺らしくもない悩みで」
「いいってことよ」
いつかこの飯代をはらうために明日もテスト勉強と格闘技術の練習をする。
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