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この家では、明治時代から学生を下宿させ、家の世話をさせていたらしい。当時はそういった学生は多く、「書生」と呼ばれていたようだ。その説明を聞いて以来、私は彼のことを「書生君」と呼んでいた。
「陽が射しているといっても、縁側で寒風にさらされてはお身体に障りますよ」
今書生君が話したのは日本語だろうか? いや、少なくとも今どきの高校生が話す言葉ではない。
「いい加減、その言葉遣いどうにかなんない? おじい様がいらっしゃるときはまだしも」
そんな私も、祖父のことを「おじい様」なんて呼んでいる。それも学校ではからかわれていた。
「そうはいきませんよ。わたくしはこのお屋敷に置かせてもらっている身なのですから」
「ああ、もう、わかったよ。自分の部屋よりもね、ここの方が気持ちいいの」
私はそう言って、低く部屋の奥まで射し込む陽光に目を細めた。
昨日から降り続いていた雪も正午を前に止んで、見上げた先には青空が広がっている。
青空のところどころには、白く細い筋のようなものが、風の動きを目に見せながら空に向かって伸びているのが見えた。
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