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おかしなもので、学校に行かなくなると、知識に対する欲求が強くなってきた気がする。
あの白く細い筋にも名前が付いているのだろうか。「雲」ではないことだけはわかった。
強い風が吹くと、儚く姿を消す白い筋。空に帰りたがっている雪の想いのようでもある。私の口から出る息のお化けのようでもある。
学校では教えられているのだろうか。
学校と言えば、今日はやけに書生君の帰りが早い。
「今日は帰ってくるの早くない?」
私がそう聞くと、書生君は私と少し距離を取って縁側に腰かけた。そして、明るい空に目を細める。
「今はテスト中ですから。明後日までは帰りは早いですよ」
「そうなんだ」
私はそっけなく答えた。喜んでいる風に伝わらなかっただろうか。私はそう気にしながら、遠く山稜へ指を伸ばした。
「ねえ、書生君。あの白い筋は何? 山から出ているの」
彼は私の指先を辿り、山稜より伸びる筋を見つけて、目を少し細めて頷いた。
「ああ、あれは靄ですね」
「モヤ? あれが?」
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