681人が本棚に入れています
本棚に追加
抱き締めていた腕から解放されて、至近距離でお互いの顔を見つめ合う。
部屋の中がシン、としているから、なんだか余計に自分の心臓が煩く感じた。
瞼を伏せ、また唯くんの顔が近付いてくる……と思ったところで、ぴた、と止まる。
「───まだ時間たっぷりあるもんな。あんま最初からがっつくと、きぃに嫌われるからやめとこ」
長い前髪を掻き上げながら、薄い笑みと共に色気を残し離れる。
その色気にあてられ、ほわほわとぼんやり思考を彷徨わせていると
「俺にやられてるきぃに俺がやられてるっていうね」
困ったように苦笑いされる。
それにまた私がやられてるんだよ、唯くん。
その雰囲気を振り払うかのように、
「このコントローラー、試してみていい?」
子供のように目をキラキラさせてくる。
「うん、もちろん」
頷くと、それは嬉しそうにゲームのセッティングを始めた。
そこでようやく私は程良く冷めたコーヒーをいただく。
最初のコメントを投稿しよう!