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「ただいま、、」
ドアを開けると、微かにツン、と油絵の具の匂いが鼻をつく。
さっきまでは感じなかった匂い。
もしかして。
玄関近く、少し開いている部屋のドアから中をそっと覗った。
「唯、くん?」
「あ、きぃお帰り。荷物、大丈夫だった?」
イーゼルに立て掛けたキャンバスの前で、顔だけこっちに向ける。
服はそのまま、長めの髪を後ろで纏め、膝まで隠れるくらいのデニム素材のエプロンをつけている。
絵画の実習は別クラスだから、絵を描く唯くんの姿は新鮮で眩しく、尊い。
「うん、スーパーでbakuさんに会って。
そこまで運んでもらったの。
唯くんのその絵は、、篠田教授の自由課題のやつ?」
少し見えたその絵は、いかにもそれっぽかった。
「そう、あともう少しだから仕上げだけやっちゃおうと思って」
「へえ、、見てもいい?」
自由課題は、出しても出さなくてもいいやつ。そんなのやるなんて、偉すぎる。
「もちろん、どうぞ。こっちおいで」
そこを作業部屋にしてるみたいだ。
イーゼル以外にも、いろんな画材が所狭しと置かれている。凄い、本格的。
あ、でもそうだ。
「ありがとう。先に、買って来た冷蔵品を冷蔵庫に入れさせてもらってもいいかな」
「あーうん、どうぞ。ごめん、俺手が汚れてて手伝えないけど、勝手に入れちゃって」
「はあい、じゃあ入れてから戻ってくるね」
買って来た荷物を持って、キッチンへ向かった。
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