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「うん、だから」
カウンター越しに、ぐいっと後頭部を引き寄せられた。
お互いに少し前のめりになりながら、唯くんの柔らかい唇が、ぽかんとした私の唇を包む。
───あったかい。
お吸い物の、だしの味と程よい塩加減さが、舌を通じて味覚をほんのりと刺激する。
唯くんにされるまま、私はその丁寧で巧みな口付けを、唯くんが終わらせるまで受け入れていた。
頭がぼうっとした頃、ゆっくり、しっとりと唇が数センチ離れる。
至近距離を保ったままの口から、美味しかったでしょ?と言われるかと思ったのに。
「きぃ、俺とのキスにだいぶ慣れたね」
予想の上をいく唯くんの言葉に、思わず口を押さえる。
やっぱり、全然慣れないよおお……!!
アハハ、と快活な笑いを残し、テレビ画面の前に戻りながらインカムをオンにする唯くん。
「おーーbaku、ずっと放置わりい。
きぃとキスしてたら止まんなくなっちまって。やっぱきぃの猫舌最高な」
チラッと一瞬、悪戯っぽく私を振り返る。
それは明らかなのんへの挑発で。
そして恐らくそれをわかった上での、のんからの、今度は着信音がけたたましく鳴り響いた。
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