717人が本棚に入れています
本棚に追加
competition
月曜日、大学で唯くんと顔を合わせて。
「昨日、のん大丈夫だった?」
会って第一声がそれ。
苦笑いしつつ思わず首に巻いたスカーフに手を当ててしまったところを目敏く見つかり、するっと外されてしまう。
「……これ、のんが?」
早々に首の痕を見つけられ、けれどどこかホッとしている自分がいて。
黙って頷くと、はぁ、と溜息を零す。
「お試し期間の間は、自重するか。
あと、たった3週間だもんな。
ごめん、誕生日だったから浮かれ過ぎてた」
顔を歪める唯くんに、ふるふると首を振った。
「私がちゃんと、事前にのんと話しておかなかったからだよ。
大丈夫、こんなのどうってことないし」
今日は、陶芸の実習の日。
席に一旦座って、「ごめん、これ」と、さっきのスカーフを返してくる。
薄紫のそれを受け取ってまた首に巻き付けていると、
「そのスカーフ、センスいいね。花火…紫陽花かな?」
柄のことを聞いているらしい。
「どっちにでも見えるようにデザインしたんだよ」
「え、きぃが作ったの?」
目を丸くする唯くんに、さっきとは別の気恥ずかしさが湧き起こる。
「テキスタイルデザインの実習で、無地のスカーフに染めただけだよ」
「…やっぱきぃ、才能あるわ」
しみじみと眺められて、余計に照れくさい。
「きぃに触発された。ここからは俺、陶芸コンペの作品造るのに集中する」
真剣な唯くんの表情に、つい見惚れてしまった。惚けているところを笑われる。
「なんか、そんな痕くらいどーぞってくらい俺ら順風満帆じゃんね」
唯くんの言葉に救われた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!