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唯くんを見習って、私もチャッチャと作品仕上げちゃお。
ろくろの作業場へ向かう唯くんとは別の作業台で、手びねりでの作業に入る。
絵でも陶芸でも、作品を制作している間は余計なことを考えずに済む。
自分の世界に没頭し、本能に向き合うこの時間が、たまらなく好き。
「───できた」
成型が出来たので、乾燥させた後は素焼きしてもらい、絵付けやうわぐすりは無しで本焼きしてもらえばいいだけ。
焼きの工程は、教授や助手さんのお仕事だ。
ちょうど隣の作品保管室から戻ってきた萬田教授に声を掛ける。
「コンペ作品、成型終わりました。あとはそのまま乾燥と焼きだけなので、お願いしてもいいですか」
「え、もう!?お前はいつも電光石火で仕上げるな」
目をぱちぱちさせる教授のそばをすり抜け、唯くんのところに向かう。
「唯く、───」
声を掛けようとして、息を飲んだ。
長い髪をぴしっと後ろに一つで纏め、汗ばむ額。ろくろを回し、成型していくその指の先端まで、集中力が伝わる。
お昼ご飯一緒にと思ったけど、この様子だとしばらく作業続けてそうだよね。
そのまま唯くんには声を掛けず、実習室を後にした。
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