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「お前がその気なら、あれをコンペの大賞に選びたいんだがな」
思ってもみなかった萬田教授の突拍子もない言葉に、「え!はあ?」と声が裏返る。
「でもまだ他の皆、造り終えてないですよね?しかもろくろ使ってないですよ」
「あれ見たら歴然だ。あれ以上のものが出てくるとは思えない。ろくろ使わずとも、あれだけ成型出来てりゃ問題ない。
けど、あれだけじゃ駄目だ。
展示するからには、パンチが弱い。
同じコンセプトで、もう一品行けないか?」
「あーー、、無理ですね。
私の中ではあれが完成形なので」
そこは譲れないし、そもそも選ばれたくて提出してるわけではないので、これ以上の労力は正直全く気が進まない。
「……だよなあ。言われると思ったけど一応確認しとこうと思ってな。
けど、将来芸術家としてやって行きたいなら、ここで展示されてスポンサー見つけておくと未来が明るくなるぞ。卒業後の進路、なんか考えてんのか」
「今のところ、幼稚園教諭を検討してます。
必要があれば保育士の資格も取って」
今のところの、なんとなくの夢だけど。
恐らくそれが私には合っていると思ってる。
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