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「子供達に絵や造形の楽しさを教えたいってところか?
お前にとっちゃ天職だけどもったいねえな。そのスカーフも、授業で染めたやつだろ。良い色出すよなあ」
首に巻いているスカーフに触られて、一瞬ドキッとした。
褒められるより、その下に隠している痕が見つからないか、そっちの方がよっぽど気がかりだった。
「褒め過ぎですよ、ありがとうございます。
じゃあ単位は期待していいんですよね?」
「お前はそっちだよな。もっと興味持って本腰入れてくれたらなあ、、まあこれ以上言っても時間の無駄だとわかってっからな。
じゃあお前のあの作品は、大賞候補から外すってことでいいな」
「はい、構いません」
こういうところ、篠田教授と違って萬田教授は話が早い。
「となると、今んとこ最有力候補は蒼伊だなあ。……おっと、口がすべっちまった」
笑って頭を掻きながら舌を出すけれど、ちっともシマッタ感がない。
しかもそのまま話を続けるし。
「だいぶ正統派にはなるけどな。
夫婦シリーズ作ってるよ。お椀や湯呑みあたりの。あいつ技巧はピカイチだからな」
唯くんが最有力候補と聞いて、またその技巧を認めてもらえて、つい顔が綻ぶ。
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